プラズマアクチュエータの画像(紫の部分がプラズマ)※撮影協力:芝浦工業大学 工学部機械工学科 角田 和巳先生
プラズマアクチュエータは、電極と誘電体という2つの主要部から構成されるシンプルな構造で、高電圧を印加することでプラズマを発生させ、イオン風によって気流を発生させる流体制御デバイスです。
プラズマアクチュエータは、以下の2つの主要部から構成されています。
電極:
高電圧を印加し、プラズマを発生させる役割を担います。電極には、銅、アルミ、ITOなど導電性の高い材料が用いられます。
誘電体:
電極と空気層を絶縁して、プラズマの安定化に貢献します。ガラス、樹脂、セラミックなどの絶縁性の高い材料が用いられます。
プラズマアクチュエータは、以下の3つのステップで気流を発生させます。
1. 高電圧を印加:電極に高電圧を印加することで、電場が発生します。
2. プラズマ発生:電場によって空気中のガス分子がイオン化され、プラズマが発生します。
3. イオン風発生:プラズマ中のイオンが電場力によって加速され、中性粒子と衝突することで、ドラッグ力と呼ばれる力が発生し、気流が発生します。
プラズマアクチュエータは、電極と誘電体というシンプルな構造で構成されており、可動部がありません。これによって、摩擦や摩耗がなく、長寿命でメンテナンスフリーを実現できます。また、薄型軽量で柔軟性に富むため、曲面や狭い場所にも容易に設置することができ、従来のモーターやファンでは実現できなかった新たな流体制御が可能になります。
プラズマアクチュエータは、マイクロ秒オーダーの高速応答性と、従来の流体制御デバイスと比較して高い推力を発生することができます。乱流制御やマイクロ流体制御など、高速な応答性が求められる分野での応用に適しています。
プラズマアクチュエータは、比較的安価な材料で作ることができ、量産にも適しています。コストパフォーマンスの高い流体制御デバイスとして、幅広い分野での普及が期待されます。
境界層分離を制御:
流体の速度が低くなると、流体抵抗が増大し、物体表面に沿って流れる流体が逆流したり、渦が発生したりする現象が起こります。これを境界層分離といいます。プラズマアクチュエータから発生するイオン風によって、境界層にエネルギーを供給することで、境界層の速度を高め、境界層分離を抑制することができます。
騒音制御:
航空機騒音は、航空機のエンジンやプロペラ、ファンなどの動作によって発生する騒音です。航空機騒音は、周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼし、深刻な社会問題となっています。
プラズマアクチュエータを用いることで、発生させたイオン風による翼表面の境界層騒音を低減できます。また、翼端渦や尾翼渦などの渦を抑制することで、渦騒音も低減することができます。
空力制御:
自動車における空力制御は、車両の空気抵抗を低減し、燃費向上や走行性能の改善に貢献します。プラズマアクチュエータから発生するイオン風によって、車体表面の境界層を制御することで、空気抵抗を低減することができます。また、車体後部の渦を抑制することで、空気抵抗を低減することが可能です。
エンジン:
燃焼室内や排気管の気流を制御して、燃焼率向上や排ガス低減を実現します。
撮影協力:芝浦工業大学 工学部 機械工学科 エネルギー変換工学研究室 角田 和巳 先生
PIVとシュリーレン法を使ってプラズマアクチュエータの気流を可視化しました。プラズマアクチュエータはプラズマの生成によって空気の流れが生まれます。この流れを「PIV」と「シュリーレン法」で可視化して解析をしています。
PIVとシュリーレン法で可視化:流体制御デバイスであるプラズマアクチュエータでは発生した空気の流れを評価することが重要です。そのため、空気の流れを可視化、そして解析ができる「PIV」と「シュリーレン法」はプラズマアクチュエータの研究に最適です。
➡動画内で使用した「PIVシステム一式」のカタログをダウンロードする
【関連記事】
PIVとは|原理や計測のメリット・トレーサー粒子について解説【技術コラム】
PIVは、Particle Image Velocimetryの略で粒子画像流速測定法を意味し、流れ場における多点の瞬時速度を非接触で得ることができる流体計測法になります。流れ場の空間的な構造を把握することができるため...「PIVとは」続きを読む
お役立ち資料【プレゼンにも使える】
「PIV入門ガイド|必要な機材から計測手順までわかりやすく解説」
「PIVって何?」「何ができるの?」「必要な機材は?」などこれからPIVをご検討されている方へ、大まかな概要を掴めるPIVの入門ガイドです。まずはPIVとはどういったものか?ざっくりと把握できます。資料をダウンロードする
撮影協力:東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 小方 聡 先生
DBD型プラズマアクチュエータによって誘起される噴流をシュリーレン法で可視化した映像です。
➡光軸調整を大幅に簡素化。システムシュリーレンのカタログをダウンロードする
【関連記事】
シュリーレン法とは|密度勾配を可視化する原理の解説から現象動画まで【技術コラム】
シュリーレン法とは、透明体の中に屈折率の異なる部分があるとき、光の進行方向の変化を利用してその部分が明確に見えるようにする光学的手法です。媒質中を伝播する衝撃波や超音波の進行状況、炎による気流の上昇...「シュリーレン法とは」続きを読む
DBDプラズマ(Dielectric Barrier Discharge Plasma)は、誘電体バリア放電プラズマとも呼ばれ、
2枚の電極とそれらの間に挟まれた誘電体で構成される放電装置で発生するプラズマです。
イオン風とは、電極間に高電圧を印加することで発生するプラズマ中の荷電粒子(イオン)の
動きによって生じる風のことを指します。具体的には、以下の3つのステップで発生します。
高電圧印加 ➡ プラズマ発生 ➡ イオン風発生
プラズマ中のイオンが電場力によって加速され、中性粒子と衝突することで、
ドラッグ力と呼ばれる力が発生し、気流が発生します。
プラズマアクチュエータは、従来の流体制御デバイスと比べて、以下の大きな効果をもたらします。
製品に関するお問い合わせや技術相談を当社スタッフがお受けいたします。
※お電話でも受け付けております。
☎0463-91-1281
9:00~18:00(土日祝日を除く)