メルトブローン|特性と独自の可視化技術について解説

メルトブローンとは?

メルトブローン_不織布製造の画像

メルトブローン(Meltblown)とは、非常に細い繊維を溶融した熱可塑性プラスチックから直接吹き出して作る不織布の一種です。この方法で作られた不織布は、フィルター性能が高く、医療用マスクやフィルター素材などに広く利用されています。


均一で高品質な不織布が得られる工程

メルトブローンの製造工程は、

溶融 ➡ 押出 ➡ 紡糸 ➡ 延伸 ➡ 熱ロール ➡ 巻き取り

ステップから成り立っています。
この一連の過程を通じて、均一で高品質な不織布が得られるのが特徴です。繊維の微細さと均一性は、高度なフィルタリング性能を持つ製品の製造に不可欠です。

更なる研究や応用が進む

多くの産業、特に医療や環境技術分野での需要が高まっている現在、メルトブローン技術はその価値を日々証明しています。エンジニアや研究者の間で、この技術の更なる研究や応用が進められており、未来の技術革命においても中心的な役割を果たすことが期待されています。


メルトブローンの特徴

メルトブローン_高性能なフィルタの画像
メルトブローン_綿の画像

メルトブローンの技術により製造される不織布は、以下のような特徴が挙げられます。

高度なフィルタリング性能

微細な繊維の形成により、ウィルスや花粉などの微小な粒子を効果的に捕捉する能力を持っています。この特性は、医療用マスクやエアフィルターなどの製品において、高いフィルタリング性能を実現するための要となっています。

快適な使用感

メルトブローン不織布は、繊維が細いため非常に柔らかく、肌触りが良いという特性を持っています。これにより、快適な使用感を提供する製品の製造が可能となります。

ノーバインディング不織布

メルトブローン不織布は、ノーバインディング不織布(自己接着型)として知られており、接着剤からの溶出がないという特徴があります。これは、製品の安全性や品質を保つ上での重要な要素となっています。


メルトブローン不織布マスク

メルトブローンのマスク画像

メルトブローン不織布マスクは、超極細繊維で構成されたフィルター層を備えたマスクで、飛沫感染対策に効果的です。1~3μmの超極細繊維で構成されており、一般的な不織布マスクに比べて、ろ過効率が高く、ウイルスや細菌を含む飛沫を効果的に捕集します。

呼吸がしやすく 快適な使用感

超極細繊維は、空気の通り道となる隙間を多く生み出すため、呼吸がしやすいのが特徴です。長時間着用していても、息苦しさを感じにくい快適な着け心地を実現しています。

また、医療現場での使用はもちろん、日常生活での感染対策にも幅広く活用できます。近年では、花粉やPM2.5などの微小粒子をカットする機能を備えたメルトブローン不織布マスクも開発されています。


メルトブローンとスパンボンドの違い

スパンボンド不織布は、合成繊維や再生繊維から作られる紡糸直結タイプの不織布です。この製法では、繊維を直接紡糸して不織布にすることにより、高い生産性とコスト効率を実現しています。スパンボンド不織布は強度が高く、多用途性があり、土木や建築、医療、衛生資材など幅広い分野で使用されています。

メルトブローン不織布とスパンボンド不織布は、製造プロセス、繊維の特性、および用途が異なる二つの不織布です。

特徴 メルトブローン不織布 スパンボンド不織布
製造プロセス 高温で溶融したポリマーを細い繊維として吹き付ける ポリマーを溶融して押し出し、冷却後にランダムに堆積させて繊維ウェブを形成、機械的または化学的に結合
繊維の特性 非常に細かい繊維、フィルタリング効果が高い 連続した長繊維、高い強度と耐久性
用途 フィルター素材、医療用マスク 土木・建築資材、医療衛生資材、工業資材など幅広い用途
代表的な製品 N95マスクのフィルター層 土木建築の防草シート、医療用ガウン


メルトブローン製法の応用例

メルトブローン_医療現場の画像
メルトブローン_繊維の画像

メルトブローン技術は、その独特な特性から多岐にわたる産業分野での応用が見られます。以下は、その代表的な応用例をいくつか挙げたものです。

医療用品の製造

微細な繊維の形成能力を活かし、医療用マスクや手術用ガウンなどの医療用品の製造に使用されています。特に、ウィルスや細菌の侵入を防ぐバリアとしての役割を果たす製品において、メルトブローン技術の重要性は高まっています。

エアフィルターや水処理フィルターで使用

エアフィルターや水処理フィルターなど、微小な粒子を効果的に捕捉する製品の製造にもメルトブローン技術が採用されています。これにより、よりクリーンな環境の実現に貢献しています。

多岐にわたって利用されている

メルトブローン技術は、包装材料や絶縁材、吸収材など、多岐にわたる製品の製造にも利用されています。これらの製品は、日常生活や産業活動の中で幅広く使用されており、メルトブローン技術の影響力の大きさを物語っています。


メルトブローンの紡糸プロセスをPIVで計測

カトウ光研では、長年培った可視化技術と画像計測技術で、メルトブローンプロセスの可視化を提案しています。紡糸条件を変更した際にプロセスがどう変化するか?実際の現象を可視化して定量的に評価します。

計測はPIV(粒子画像流速測定法)で行います。繊維を撮影した輝度情報から、画像上でパターンマッチングを行い、紡糸工程の速度ベクトルを算出します。また、気流を可視化して計測することで、ノズルの吐出状態も把握することができます。シミュレーションで想定される製造工程が、実際にはどのような状態なのか?比較・検証が可能になります。

カルマン渦の渦度を計測_PIVとは

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溶融した材料が 高速エアーで延伸される様子

高速高温のガスによって糸状の繊維が延伸し、他の製造方法では及ばない、非常に細い繊維で構成される不織布を作れます。メルトブローンの延伸工程では通常、繊維径を約1μm~30μmで生成できます。ノズルから吹き出る熱噴流や冷却気流を制御することで、用途に応じた加工ができます。
※中には500ナノメートルを下回る極細繊維の生成も可能で、繊維同士が溶着し合い、編み込む必要が無いことも特徴です。

➡ハイスピードカメラのカタログをまとめてダウンロードする


PIV計測|繊維の速度ベクトルを算出

高速で吐出する繊維の状態をハイスピードカメラで撮影し、動画データを基にPIV計測を行います。PIV計測では、速度ベクトルを算出できるので、シミュレーションとの比較にも最適です。

ノズル近傍の気流は、秒速100mを超える場合もあります。高速の気流を制御する環境の最適化には、シミュレーションのみではなく、実測での評価が重要になります。

➡画像から流体の速度を算出-PIVシステム一式のカタログをダウンロードする


紡糸プロセスだけでなく 気流も計測

瞬時速度ベクトル

平均速度ベクトル

ノズルからの噴流は、不織布繊維を延伸する箇所をどの位置に設定するか?で制御をしています。

気流の制御をする上では

  • ノズル近傍域が期待している流速か?
  • 乱れはどの程度発生しているか?
  • 時系列の速度変動はどの程度か?

など検証が重要になります。

煙(トレーサー粒子)をノズルから吐出して、レーザーシート光源を照射すれば、気流を可視化(流れの可視化)できます。可視化された画像からPIV計測によって、繊維そのものの評価だけではなく、ノズルの噴流も計測することが可能です。

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