溶接のシールドガス|役割と特徴・可視化手法を解説

シールドガスとは?

シールドガスのボンベを操作する作業員
シールドガスの可視化_溶接中の画像

シールドガスとは、アーク溶接の際に使用されるガスで、主な目的は溶接中の溶接金属を大気中の酸素や窒素などの有害な成分から保護することです。

アーク溶接は、高温の電気アークで金属を溶かして接合する技術です。高品質な溶接には、金属の酸化や不純物の混入を防ぐことが重要であり、シールドガスは重要な役割を果たします。シールドガスは、溶接部を覆い、大気中の酸素や窒素との接触を遮断することで、溶接金属の酸化や不純物の混入を防ぎます。


溶接中のシールドガス|具体的な効果は?

複数のシールドガスのボンベ
シールドガスの可視化_アルゴンガスの溶接

酸化を防止する

空気は、約80%の窒素ガスと約20%の酸素ガスで構成されています。これらのガスは、溶融金属と接触すると反応を起こす可能性があり、結果として溶接部の品質が低下する恐れがあります。

シールドガスは、このような反応を防ぐためにアークの周囲に供給され、溶融金属と空気との接触を遮断し酸化を防止します。

湿気からの保護

空気中の湿気は、溶接中に水素の侵入の原因となり、これが溶融金属内で気孔の形成やクラックの原因となる可能性があります。シールドガスは、このような湿気の影響を最小限に抑える役割も果たします。

シールドガスが無いとどんな影響が?

シールドガスが無いと、溶融金属は空気の成分と容易に反応を起こします。具体的には、鋼板をシールドガス無しでアーク溶接すると、溶接ビードには多数の気孔(ブローホール、ピット)が現れます。さらに、溶接ビード周辺にはスパッタが多く観察されます。

これは空気との反応により、溶融鋼に多くの窒素と酸素が溶解することが原因です。冷却・凝固の過程でガス成分の溶解度が急激に小さくなり、N2ガスやCOガスが生成され、気孔が形成されていきます。


シールドガスの種類と特徴

シールドガスの選択は、溶接する金属の種類、溶接の目的、および期待される溶接の品質に応じて行われます。適切なガスの選択は、製品の性能に大きく影響します。

アルゴンガス(Ar)

特性:アルゴンは不活性ガスであり、金属との化学反応を起こさない特性を持っています。この性質により、溶接中に溶融金属が大気中の窒素や酸素と反応するのを防ぐ役割を果たします。

用途:アルゴンは、アルミニウムやチタンなどの非鉄金属の溶接に特に適しています。また、ステンレス鋼の溶接にも使用されたり、製品の仕上がりを考慮した、スパッタの低減やビード外観を良好にする目的もあります。

ヘリウムガス(He)

特性:ヘリウムは不活性ガスの一つで、アルゴンよりも熱伝導率が高い特性を持っています。このため、高い入力エネルギーを必要とする溶接に適しています。

用途:ヘリウムは、アルミニウムや銅のような高熱伝導性の金属の溶接に多く使用されます。特に、酸素と容易に反応する金属の溶接には、ヘリウムやアルゴンのような不活性ガスが推奨されます。

二酸化炭素(CO2)

特性:二酸化炭素は単独で使用されることもありますが、他のガスとの混合で使用されることも多くあります。純粋なCO2を使用すると、アークが不安定になることがあるため、アルゴンとの混合が一般的です。

用途:二酸化炭素は低コストであるため、一般的な鋼の溶接によく使用されます。特に、炭酸ガスアーク溶接として知られる方法で使用されています。

混合ガス

特性:アルゴンと二酸化炭素の混合は、最も一般的な混合ガスの一つです。この組み合わせは、アークの安定性と溶接性能を向上させる効果があります。

用途:混合ガスは、一般的な鋼やステンレス鋼の溶接に適しています。特に、MAG溶接で使用されています。

その他のガス(水素、酸素、窒素など)

水素、酸素、窒素などのガスも特定の溶接アプリケーションや特定の金属の溶接において、シールドガスとして使用されることがあります。これらのガスの選択は、溶接する金属の種類や目的に応じて行われます。

次世代エネルギー水素の可視化_水素タンク複数の画像

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シールドガスに起因する溶接欠陥

シールドガスの可視化_溶接欠陥

溶接欠陥とは、溶接中に生じる耐久性や機能性に影響を及ぼす不具合を指します。これらの欠陥は、使用する溶接手法や熱源の種類によって異なることがあります。アーク溶接やレーザー溶接といった目的・用途の違う溶接手法では、発生する欠陥の特性が違ってきます。

シールドガスと溶接欠陥の関係

シールドガスの供給が不足すると、溶融金属が大気中の酸素、水素、窒素と反応し、酸化や窒化の反応が進行します。この結果、金属内部に「ブローホール」と呼ばれる気孔が発生することがあります。これは、溶融金属内部にガスが残留し、そのまま凝固することで生じる欠陥です。

ブローホール|ピット|ポロシティ

ブローホールを含む溶接欠陥は、製品の耐久性を低下させる主要な原因となります。また、溶接部に発生したガスが原因で「ポロシティ」と呼ばれる気孔や「ピット」と呼ばれる小さな空洞が形成されることもあります。これらも同様に、製品の強度や寿命に悪影響を及ぼす可能性があります。

溶接欠陥への対策は?

溶接欠陥の発生を防ぐためには、適切なシールドガスの選択や供給量の確保が必要です。また、溶接条件や環境を最適化することで、欠陥の発生リスクを低減することができます。具体的には、溶接速度や電流、電圧などの条件を適切に設定することが求められます。


シールドガスを可視化(見える化)する技術

アーク光を除去してシールドガスを可視化

カトウ光研が提案するシールドガスの可視化技術は、強烈なアーク光を取り除き(画像上で発光を抑える)シールドガスの効果を実際に観察することができます。シールドガスを可視化することで、ブローホールやスパッタの発生を最小限にするための検証やガスの最適な流量をダイレクトに確認できます。

➡溶接中のシールドガスを見える化するシステム「溶接プロセス可視化システムShield View」のカタログをダウンロードする

溶接の可視化とは|初心者でもわかる!可視化のメリットと必要なツールを解説

お役立ち資料【プレゼンにも使える
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シュリーレン法を応用した技術

シールドガスの可視化は、シュリーレン法をベースとした手法です。簡単な操作で撮影ができて、カトウ光研の独自の技術により、従来は困難とされていた溶接中のガス流れ(乱流)を観察できます。

ろうそくの熱流体を可視化_シュリーレン法とは

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シールドガスの可視化による検証

溶接トーチの画像
シールドガスの可視化の全体像

シールド性の検証
外乱風の影響によるシールド性の検証ができます。


最適な溶接トーチとワーク距離の検証
溶接トーチとワーク距離の違いによる、アーク発生時の乱れ変化を確認することができます。


最適なガス流量の検証
最適なガス流量を見極め、コスト削減の検証ができます。


最適なウィービング速度の検証
大気の巻き込みを可視化することで、最適なウィービング速度を検証できる


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溶接中のシールドガス|可視化事例

TIG溶接のシールドガス挙動の可視化

TIG溶接中のシールドガスを可視化した映像です。
アルゴンガスの挙動をハイスピードカメラで撮影したスーパースロー映像です。

溶接条件
溶接機:DynastyR 280 TIG Welders(Miller Electric Mfg. LLC)
ガス種:Ar 98%
電流値:150A
流量:10L/min

➡溶接中のシールドガスを見える化するシステム「溶接プロセス可視化システムShield View」のカタログをダウンロードする


TIG溶接のシールドガス挙動の可視化

アーク溶接のシールドガスを可視化。接合部の違いからシールド性が大きく変わります。シールドガスを可視化することで、溶接欠陥の検証ができます。


溶接スパッタの画像

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溶接のシールドガスに関する質問

溶接のシールドガスの役割は何ですか?

溶接のシールドガスは、主に以下の3つの役割を担っています。

1. 溶接部を大気中の酸素や窒素から保護する
空気中の酸素や窒素は、溶接部と反応して酸化物や窒化物を生成し、溶接部の強度や
靭性を低下させます。シールドガスは、これらのガスを溶接部から隔離することで、
酸化物や窒化物の生成を防ぎ、高品質な溶接部を実現します。

2. アークを安定させる
シールドガスは、アーク周辺のガスを一定の状態に保つことで、アークを安定させます。
これにより、溶接作業が容易になり、スパッタの発生を抑制することができます。

3. 溶接ビードの形状を改善する
シールドガスは、溶接ビードの形状を滑らかにし、美しく仕上げる効果があります。

シールドガスの種類は?

溶接に使用されるシールドガスの主な種類は次のとおりです。

  • アルゴンガス(Ar)
  • ヘリウムガス(He)
  • 炭酸ガス(CO2)
  • 混合ガス(アルゴンとヘリウムなど)
シールドガスにアルゴンガスが使われる理由は?

シールドガスにアルゴンガスが使われる理由は、主に以下の3つです。

1. 化学的に安定している
アルゴンガスは不活性ガスであり、他の元素と反応しにくい性質を持っています。
そのため、溶接部を大気中の酸素や窒素などのガスから保護し、酸化や窒化を防ぐことができます。

2. アークを安定させる
アルゴンガスは、アーク周辺のガスを一定の状態に保つことで、アークを安定させる
ことができます。これにより、溶接作業が容易になり、スパッタの発生を
抑制することができます。

3. 多くの金属材料に使用できる
アルゴンガスは、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンなど、さまざまな
金属材料に使用できます。


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