超音波とは、周波数が20kHz(ヘルツ)以上の音波のことを指します。この周波数の範囲は、人間の聴覚範囲(20~20,000Hz)を超えているため、私たちは聴くことができません。一方で、超音波はその特性から様々な分野で研究や応用がなされています。
超音波は、物質中の粒子を周期的に圧縮と膨張させることで伝播します。このため、空気や液体、固体などの異なる媒質を介して広範囲に伝わります。その伝播速度は媒質の密度や弾性に依存し、一般的に固体の中で最も速く、空気中で最も遅いとされています。
超音波の伝播特性は、周波数や振幅、波形によって変化します。高周波数の超音波は、波長が短く指向性が強いため、狭い範囲に集中して伝播することができます。一方、低周波数の超音波は波長が長く指向性が弱いため、広範囲に伝播します。
また、超音波は反射・回折・屈折などの現象を引き起こします。これらの現象は、超音波が障害物に遭遇したり、異なる媒質に入る際に発生し、その挙動や伝播方向が変わることによって生じます。超音波の特性は、物理学や音響学など多くの学術分野で研究されており、その理解を深めることが重要とされています。
超音波は、その使用目的に応じてさまざまな周波数帯域が用いられます。具体的な周波数帯域は以下の通りです。
医療分野:
医療用途では、超音波の周波数帯域はおよそ1MHzから15MHz程度です。高い周波数は解像度を向上させる一方で、浸透深度は減少します。そのため、組織や臓器の詳細な画像を得るために高周波が好まれます。
工業用途:
工業用途では、超音波の周波数帯域はおよそ2MHzから20MHz程度です。欠陥探知や材料の厚み測定には、浸透深度と解像度のバランスが重要であり、中周波数帯域が適しています。
距離や動きの検出:
距離や動きの検出には低周波数の超音波が使用されます。具体的には40kHzから数百kHz程度です。低周波数は空気中での減衰が少なく、より遠距離を検出できるため、セキュリティシステムや自動車の駐車支援システム(パーキングセンサー)に用いられます。
超音波の周波数はその用途に応じて選択され、医療、工業、セキュリティなどの分野で特定の要件を満たすために最適化されます。周波数の選択は、解像度と浸透深度のトレードオフ、および空気中や他の媒体での伝播特性に基づいて行われます。
超音波は、気体や液体を疎密波として伝播する縦波です。その速度は媒質により異なり、音速で表されます。反射が起こりやすく、大きな音響エネルギーを伝送することができます。
超音波は、通常の音波よりも周波数[Hz]が高く波長[m]が短いです。周波数が高くなれば波長は短くなり、逆に周波数が低いと波長は長くなります。
その特性を活かして超音波は、精密な測定や検査に活用されます。
空気だけではなく、液体や固体中も伝播します。このため、医療分野では超音波を用いた体内の組織や臓器の検査、産業分野では金属の内部構造の検査や清掃などに利用されています。
さらに超音波は、物質中を伝播する際に反射や散乱が生じるため、物質内部の情報を得ることができます。高速で伝播する特性から非破壊検査に適しています。
一般的に物質が密で弾性が高いほど、超音波の伝播速度は速くなり、減衰が小さくなります。液体や固体は空気に比べて密度が高く、粒子間の結合が強いため、振動エネルギーが効率よく伝わります。空気中では粒子間の距離が大きく、結合が弱いため振動エネルギーの伝播が効率的で無いため、減衰が大きくなります。
具体的には、水中での音速はおよそ毎秒1500mで空気中の音速(およそ毎秒340m)よりも約4.4倍速く伝播します。金属ではさらに音速は速く、毎秒数千メートルに達することもあります。
媒質 | 速度 |
空気 | 約340m/s |
水 | 約1,500m/s |
鉄 | 約5,000m/s |
ガラス | 約5,500m/s |
コンクリート | 約4,000m/s |
一般的に物質が密で弾性が高いほど、超音波の伝播速度は速くなり、減衰が小さくなります。液体や固体は空気に比べて密度が高く、粒子間の結合が強いため、振動エネルギーが効率よく伝わります。空気中では粒子間の距離が大きく、結合が弱いため振動エネルギーの伝播が効率的で無いため、減衰が大きくなります。
具体的には、水中での音速はおよそ毎秒1500mで空気中の音速(およそ毎秒340m)よりも約4.4倍速く伝播します。金属ではさらに音速は速く、毎秒数千メートルに達することもあります。
大気中の超音波を可視化
シュリーレン法の原理図
シュリーレン法は、光の屈折現象を利用して密度変化を可視化する技術です。このシュリーレン法を用いることで、超音波の伝播状態を観測することができます。さらに専用の画像処理を組み合わせることで、微細な超音波も高感度で撮影できます。
シュリーレン法による超音波可視化は、医療分野において非常に有用です。超音波診断や治療装置の開発や最適化に貢献しています。具体的には、超音波画像法や高度焦点式超音波(HIFU)治療の技術開発で、超音波ビームの形状や分布を把握し、装置の性能評価や改善に寄与します。
産業分野でも多くの用途で適用されています。例としては、超音波洗浄システムの設計や調整に有効です。超音波の伝播やキャビテーション現象を視覚化することで、洗浄性能を高める装置の改良が実現できます。
医用工学、物理学、材料工学分野の研究開発にも役立ちます。超音波伝播のメカニズムや物質中の伝播特性の研究に、可視化は非常に重要です。超音波応用技術の理解や新たな分野の開拓が促進されます。
超音波は、媒質に周期的な密度変化を与えます。この媒質の周期的な密度変化は、光に対して回折格子の役割を果たします。シュリーレン法で可視化した画像では、濃淡がある領域で密度変化が起きていること示しています。
シュリーレン法では、精密な平行光を超音波が伝播している領域に照射することで、光の屈折から密度の変化を観察できます。外部の干渉が無い定在波や伝播直後の進行波では、縞模様が波長となります。波長が短い(周波数が高い)ほど密度変化の間隔が狭くなります。
下記の事例では、シュリーレン法で可視化された超音波をハイスピードカメラで撮影しています。超音波が高速で伝播していく可視化事例です。
超音波探査用のトランスデューサーから発生するパルス進行波をシュリーレン法で可視化した事例です。
撮影協力:東京大学 先端科学技術研究センター 星 貴之 先生
シュリーレン法で空気中を伝播する超音波を可視化しています。
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撮影協力:東京工業大学 未来産業技術研究所 中村研究室 田中 宏樹 先生
市販のパーキングセンサーおよびボルト締めランジュバン型振動子(BLT)の進行波を可視化した様子です。疎密波が反射する波面形状や角度を可視化して、どの方向からどの程度の強度で音が返ってきているのか?を評価しています。
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超音波振動子からの連続波をシュリーレン法で可視化した事例です。
超音波の周波数は、20kHzから数GHzと幅広く、用途によって使い分けられています。
周波数帯と用途
超音波には以下のような特徴があります。
1. 直進性:光のように直進し、障害物に当たると反射する性質があります。
2. 指向性:発信源から放射状に広がるだけでなく、特定の方向に集中させることもできます。
3. 透過性:固体、液体、気体など様々な物質を透過することができます。
4. 吸収性:物質によって吸収されやすい性質があります。
5. 散乱性:微小な粒子や界面で散乱される性質があります。
超音波と電磁波には以下のような違いがあります。
物理的性質:
超音波は縦波であり、その伝播には固体、液体、または気体といった物理的媒体が必要です。
一方、電磁波は縦波と横波の両方の特性を持ち、真空中でも伝播することができます。
周波数と波長:
超音波の周波数範囲は約20kHzから数GHzまでであり、主に可聴範囲以上の
音波として定義されます。電磁波の周波数範囲は広く、無線波からガンマ線までを含みます。
生成と検出:
超音波は圧電素材や磁歪素材を使用して生成され、同様の素材で検出されます。
電磁波は電荷の加速運動によって生成され、アンテナや光センサーで検出されます。
シュリーレン法は、光の屈折率の変化を可視化する方法です。超音波は、空気や液体などの媒質を
伝搬する際に、その密度変化によって屈折率も変化させます。シュリーレン法はこの屈折率の
変化を利用して、超音波を可視化することができます。
詳しくはこちらで解説しています。
➡シュリーレン法とは|密度勾配を可視化する原理の解説から現象動画まで【技術コラム】
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