超音波とは?
超音波とは、周波数が20,000 Hz(ヘルツ)以上の音波のことを指します。
この周波数範囲は人間の聴覚範囲(20~20000Hz)を超えているため、私たちは通常、超音波を聞くことができません。
しかし、超音波はその特性から様々な分野で研究や応用がなされています。
超音波は、物質中の粒子を周期的に圧縮と膨張させることで伝播します。
このため、空気や液体、固体などの異なる媒質を介して広範囲に伝わります。
その伝播速度は媒質の密度や弾性に依存し、一般的に固体の中で最も速く、空気中で最も遅いとされています。
超音波の伝播特性は、周波数や振幅、波形などによって変化します。
高周波数の超音波は、波長が短く、指向性が強いため、狭い範囲に集中して伝播することができます。
一方、低周波数の超音波は波長が長く、指向性が弱いため、広範囲に伝播します。
また、超音波は反射、回折、屈折などの現象を引き起こします。
これらの現象は、超音波が障害物に遭遇したり、異なる媒質に入る際に発生し、超音波の挙動や伝播方向が変わることによって生じます。
超音波のこれらの特性は、物理学や音響学、工学など多くの学問分野で研究されており、その理解を深めることが重要とされています。
超音波の特性
超音波は気体や液体を疎密波として伝播する縦波です。
その速度は媒質により異なり、音速で表されます。反射が起こりやすく、大きな音響エネルギーを伝送することができます。
- 高周波数・短波長
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超音波は通常の音波よりも高い周波数を持ち、短い波長を持っています。
その特性を活かして非常に精密な測定や検査が可能になります。
- 非破壊検査に適している
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超音波は物質中を伝播する際に反射や散乱が生じるため、物質内部の情報を得ることができます。
また、超音波は音速に近い速さで伝播するため非破壊検査に適しています。
- 液体・固体中を伝播する
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液体や固体中を伝播します。
このため、医療分野では超音波を用いた体内の組織や臓器の検査、産業分野では金属の内部構造の検査や清掃などに利用されています。
- 空気中よりも物質中の方が伝播しやすい
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一般的に、物質が密で弾性が高いほど、超音波の伝播速度は速くなり、減衰が小さくなります。
液体や固体は空気に比べて密度が高く、粒子間の結合が強いため、振動エネルギーが効率よく伝わります。
一方で、空気中では粒子間の距離が大きく結合が弱いため、振動エネルギーの伝播が効率的で無いため減衰が大きくなります。
具体的には水中や金属などの固体材料では、超音波の伝播速度がはるかに速く、減衰が小さくなります。
例えば、水中では音速はおおよそ1500メートル/秒で、空気中の音速(約340メートル/秒)よりも約4.4倍速く伝播します。
また、金属では音速はさらに速く、数千メートル/秒に達することがあります。
媒質 | 音速 |
空気 | 約340m/s |
水 | 約1500m/s |
金属 | 約5000m/s |
シュリーレン法で超音波の可視化

大気中の超音波を可視化
シュリーレン法は光の屈折現象を利用して密度変化を可視化する技術であり、この技術を用いることで超音波の伝播状態を観測することができます。
超音波は空気や水を伝播する波動であり、その振動状態を観測することで医療、洗浄などの様々な分野で活用されています。
最近では車の自動運転やドローンの制御など、大気中を伝播させたセンサー用途に使われる機会が増えています。
空間中の密度勾配の変化を可視化撮影することができるシュリーレン技術に、専用の画像処理を組み合わせることで高感度化を実現し、大気中で超音波が伝播する様子を撮影することができます。
シュリーレン法で超音波を可視化するメリット(超音波可視化の応用事例)
- 医療分野での応用
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シュリーレン法による超音波可視化は、医療分野において非常に有用で、超音波診断や治療装置の開発や最適化に役立てられます。
例えば、超音波画像法や高強度焦点式超音波(HIFU)治療などの技術開発において、
超音波ビームの形状や強度の分布を把握し、装置の性能評価や改善に寄与します。
- 産業分野での応用
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産業分野でも多くの用途に適用されています。
例としては、超音波洗浄システムの設計や調整に有益です。
超音波の伝搬やキャビテーション現象を視覚化することで、洗浄性能を高める装置の改良が実現できます。
- 研究開発での応用
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シュリーレン法による超音波可視化は、医用工学や物理学、材料科学の研究開発にも役立ちます。
超音波伝播のメカニズムや、物質中での伝播特性の研究に貢献します。
超音波応用技術の理解や新たな応用分野の開拓が促進されます。
シュリーレン法による超音波可視化事例(シュリーレン法+ハイスピードカメラ)
超音波は媒質に周期的な密度変化を与えます。
この媒質の周期的な密度変化は、光に対して回折格子の役割を果たし、画像上の濃淡がある領域で密度の変化が生じていることを示します。
シュリーレン法では精密な平行光束を超音波生成領域に照射することで、密度の変化を観察することができます。
外部の干渉がない定在波や伝播直後の進行波では、縞模様が波長(波長 = 音速 ÷ 周波数)となり、周波数が高いほど密度変化の間隔が狭まります。
下記の事例では、シュリーレン法で可視化された超音波をハイスピードカメラを使用して撮影しています。
超音波が高速で伝播する、可視化事例です。
400kHz 超音波探査用トランスデューサーからの進行波8パルス
撮影協力:
東京工業大学 科学技術創成研究院
木倉研究室 木内寛允 様
シュリーレン法で空気中を伝播する超音波を可視化しています。
400kHz超音波の進行波をシュリーレン用画像処理ソフトウェアで、明確に伝播する様子を捉えています。
- 使用機材
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超音波の疎密波可視化【シュリーレン法】
撮影協力:
東京工業大学 未来産業技術研究所
中村研究室 田中宏樹 様
市販品のパーキングセンサーおよびボルト締めランジュバン型振動子(BLT)の進行波を撮影している様子です。システムシュリーレンとハイエンドなハイスピードカメラを使用して撮影しています。疎密波の反射の波面形状や波面の角度を可視化して、どの方向からどの程度の強度で音が返ってきているのか?を評価しています。
- 使用機材
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【シュリーレン法】超音波振動子からの連続波伝播の可視化
超音波振動子から発生する連続波をシュリーレン法で可視化した事例です。
- 使用機材
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空中集束超音波の可視化
撮影協力:
東京大学 先端科学技術研究センター 星 貴之 先生
シュリーレン法で空気中を伝播する超音波を可視化しています。
- 使用機材
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